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日本酒造りは酒屋萬流(其の壱) ~日本酒伝道(R)養成講座3~

日本酒造りは酒屋萬流(其の壱) ~日本酒伝道(R)養成講座3~

8月暑い夜、日本酒伝道師(R)養成講座2日目が行われました。
夏場、多くの酒蔵さんは造りがお休みの時期になります。蔵元さんや杜氏さんが参加してのイベントも、色々開催されていますね。今のうちに造りについての知識をつけて、蔵の方に質問しちゃうなんていうのも楽しいですよね♪

日本酒伝道師(R)養成講座 ~その1:和食との密接な関係~ に続き、この日はいよいよ日本酒の造りについてのお話です。

三限目:日本酒造りは酒屋萬流

杉原先生による酒米のお話

本日の講座のタイトルにもなっている 『酒屋萬流(さかやばんりゅう)』。
これは、「酒を造るにはいろいろな方法、スタイルがある」という意味で、古くから酒造りの世界で使用されている言葉です。

ご存じのとおり、日本酒は醸造酒です。それは、原料を酵母によりアルコール発酵させて作られた酒のことで、発酵という自然の力を活かす、様々な工程があって美味しい日本酒が造りだされます。
大凡の工程は、いずれの蔵でも同様ですが、造りの細かな点は、その蔵のおかれた自然条件や、蔵人の技術によって千差万別なのです。

『日本酒』 の定義

ここで改めて、『日本酒』とはどういったものを指すかを確認しましょう。
日本酒は、酒税法では ”清酒” の名称で統一され、しっかりした定義(*1)があります。
米、米麹、水を原料として発酵させて漉したもので、アルコール度数22度未満のもの。この漉すとは、液体と固体を分けることを言います(米、米麹、水の他に、ごく一部のものも原料として認められています)。
さらに、清酒の中でも米及び米麹に国内産米を用い、日本国内で製造したものを「日本酒」とする という地理的表示を、2015年12月に制定(*2)しました。
つまり、純国産の SAKE のみが日本酒と表示できる!! 日本酒を世界に広めようという、戦略なのですね。

そして、呼称とは別に、国税庁で制定した清酒の製法品質表示基準というものがあります。米の品質、磨き具合、醸造用アルコール添加有無によって、表示名が分けられています。これが、純米酒、吟醸酒といった特定名称(*3)です。

これらの取り決めが、消費者にとって日本酒を難しくしているとも言われていますね。しかし、少し日本酒の造り方を知ると、この表示が自分好みのお酒を選ぶときの糸口になりますから、ちょっと頑張って理解しておきましょう。


*1 清酒の定義 : 国税庁 酒税法における「清酒」の定義 (外部サイト)
*2 日本酒の定義 : 国税庁 地理的表示「日本酒」生産基準 (外部サイト)
*3 特定名称酒 : 国税庁 「清酒の製法品質表示基準」の概要 (外部サイト)

日本酒造りは独自の並行複発酵

世界には、様々な醸造酒があります。代表的なものは、ブドウから造る酒:ワイン、大麦から造る酒:ビール、米から造る酒:日本酒 の3つです。

代表的な醸造酒の工程比較

お酒を造る過程には、”糖化と発酵” が必要です。
原料米のデンプンを麹酵素によってブドウ糖に分解するのが ”糖化”。その糖分を、酵母によってアルコールを生み出すのが ”発酵” です。

  • ワインの場合、原料となるブドウに糖が含まれていますから、果汁に酵母を加えることでアルコール発酵が行われます。
  • ビールの場合、大麦を発芽させた麦芽に水とホップを加え糖化した麦汁を仕込み、そこに酵母を加えてアルコール発酵させます。
  • 日本酒の場合、蒸した米を麹菌の力でブドウ糖を生成します(米麹)。次に、米麹+蒸し米+水で酵母を培養します(酒母)。更に、酒母、蒸し米、米麹、水を三段階で、糖化させながらアルコール発酵を徐々に促します。

上記は、ものすご~くざっくりした説明です。これだけでも、日本酒の造りがとても複雑なことがわかると思います。

この独特の醸造方法は「並行複発酵」と呼ばれ、江戸時代には確立されていた伝統ある製法です。なるほど、古くから脈々と伝えられた製法をとっても、日本酒は和食同様に文化であるという気がしますね。


※ 日本酒の製造工程について、より詳しい説明は、こちらをご覧ください。
日本酒造組合中央会:製造工程 (外部サイト)

酒造りの技を支える源1:良い酒米

ざっくりと仕込みの工程を知った上で、次は原料についてのお話。

まずは、米。
日本酒伝道師(R)養成講座 ~その2:酒造好適米事情(青森編)~でも良い酒米の条件を習いました。大粒であること、心白があること などの幾つかの条件がありました。
さらに、科学的な説明によると… デンプンにはアミロペクチンという粘性の特徴を持つ成分があり、この分子構造の側鎖という枝分かれが短い方が、お米は溶けやすく・お酒が造りやすいのだそうです(上記、杉原先生の写真)。
…むっ、難しい(笑)。

粒の大きさ、心白の具合、タンパク質の量 etc. の他、アミノペクチンの側鎖が短いという条件も、『山田錦』は当てはまるのだそうです。つまり、山田錦は酒造好適米(酒米)のトリプルスリー。吟醸によし、麹米によし、掛米によしと言われるのです。
酒造好適米の生産量のうち、山田錦がダントツ一位だということも、これで納得ですね。

酒造りの技を支える源2:良い水

もう一つの原料、水。
日本酒は8割が水でできています。「名水あるとこに銘酒あり」と言われるように、仕込み水の性質は、その蔵の造るお酒の特徴にもなります。
日本酒の味わいは、
「軟水」で仕込むと ”軽くて、なめらか、あっさりした酒” に、
「硬水」で仕込むと ”旨口で濃厚、輪郭のしっかりした酒” が
造られる傾向にあるそうです。
その昔、灘のお酒が良いとされたのも、水による影響大。灘の仕込水は ”宮水” と呼ばれる硬水で、鉄やマンガンなど酒の香味に悪影響を及ぼす成分がきわめて少ないのです。科学的な分析装置のない時代なのに、宮水を見つけた昔の人の分析力ってすごいですね。

さて現代は、伏流水・地下水・水道水(伏流水を水道にしている地域)などが、仕込水として用いらています。いずれも、自然が長い時間かけて蓄えた美味しい水。私たちが美味しいお酒がいただけるのも、日本の豊かな自然の恵みのおかげですね。

三限目の最後に…

造りについて学び、日本酒というのは酵母という微生物の力を借り、原料である米・水の性質によっても香味が左右されるということが解りました。

今回の授業の中で聞いた言葉を載せて、今回の記事を〆めたいと思います。

「酒造りという舞台は酵母が主役」
酵母がブドウ糖を食べながらアルコールを生成し、個性豊かな様々な香り、味成分を放ちながら、酵母は自身が生成したアルコール濃度に耐えられず死んでいく。酵母の生涯を賭けた作品が日本酒なのです。

私たちは、自然と蔵人のコラボレーションした産物を味わっているわけですね。日本酒の多様な香味を、限られたラベルの範囲で表すのが難しいのも仕方内容な気がしてきました。


※ 注 ※
この記事は筆者が受講して、特に印象深かった点を中心に記述しています。実際の講座では、本記事にない色々なお話がなされています。また、ところどころ感想もまじえておりますので、ご了承ください。