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日本酒を味わう『酒器』セミナー ~日本酒伝道(R)養成講座8~

日本酒を味わう『酒器』セミナー ~日本酒伝道(R)養成講座8~

今回は、酒器のお話し。
この時間の講師は、×SAKEプランナー 木村 光 氏です。
Sake Salon OZ(*1) を主宰する方で、日本酒のイベントやセミナー、飲食店など、日本酒に関わることをトータル・プロデュースされています。

お酒を飲むのに欠かせない道具『酒器』。飲む器(盃、お猪口 など)だけでなく、お酒をつぐための器(銚子、徳利 など)の総称です。

より美味しくお酒を飲むためには、酒器選びも大切ですよね。日本酒そのものを勉強するだけではなく、酒器のことを知れば、日本酒ライフはぐぐっと充実するはず。ここはひとつ、うまい酒を飲むために、酒器の知識を身につけましょう♪

*1 日本酒を楽しみ、学び、伝えていく Sake Salon OZ
http://www.sake-salon-oz.com/ (外部サイト)

八限目:日本酒を味わう『酒器』セミナー

今回は『酒器』の中でも、飲む方に絞って深堀しましょう。

普段、日本酒を飲むときに使う酒器と言えば、平盃、きき猪口、ぐい呑み、升、グラス … ざっと考えただけでも、いくつもの形状が浮かびます。さらに大きさ、素材、色などの違いも考えると、分類するのが難しいほどです。

ワインやウイスキーなどの洋酒は、主にガラス製。それに比べ、酒器のバリエーションが数多いのは日本酒の特徴と言えます。
なぜ、日本酒の酒器は多種多様になったのでしょうか?

一つの要因は、飲む温度。
洋酒などの引用温度帯は常温か冷やす程度なのに対し、日本酒は、常温、冷やして、燗にしてと、いろいろな温度帯で楽しみます。その時の飲む温度に適した酒器を選ぶため、多様な酒器が必要となるのです。
しかし、それだけでは現在の多種多様さの理由にはならないでしょう。そこには、日本酒と酒器の関係に特別な事情があるはずです。

味とは、なにか?

異なる酒器で日本酒の味を確かめる  

授業のはじまりに、蛇の目のきき猪口(3勺)、ガラスの酒杯、底が広がったグラスの3タイプの酒器で、同じお酒を飲み比べてみました。お酒は、冷蔵庫で冷やした純米大吟醸です。
同じ温度で、同じお酒(純米大吟醸酒)を飲んでいるのに、一口含んだ時の印象が異なるのです。それは、味を感じる仕組みに原因があります。

味は舌で感じるものと思われていますが、実はそれだけではないのです。
『味わう』というのは、五感で得た情報を脳が判断して味として認識すると言われています。味覚はそのうちの一つの情報であり、舌は味覚を察知する器官。
味覚の他にも、目で酒と器を愛で(視覚)、手や唇で器に触れ(触覚)、鼻で匂いを感じる(嗅覚)。これらがすべて合わさって、お酒が美味しいと感じるのです。

先ほどの3タイプの酒器でお酒の印象が変わったのも、まさにそれでしょう。

底の広がったグラスでお酒を飲むと、酒の味を舌で感じる前に、グラスの内側に漂う香を強く感じ取ります。風邪をひいた時、鼻詰まり状態では食べ物がおいしくないように、人は美味しいと感じるためには ”香” を感じることは重要な要素なのです。

また、冷たい吟醸酒を飲むとき、ガラスよりも温度を伝えにくい陶器とでは、唇から感じる質感が異なります。その印象が、液体の滑らかさとあいまって、お酒の味の印象に加わるのです。

日本酒を味わう

ご存じのとおり日本酒は、日本人の主食である米と、生命の源である水からできているお酒です。そして、土地の歴史や文化をつぎ込んで造られた伝統技術の結晶です。
地酒を飲むとき、その土地に思いを馳せたりしませんか? 日本酒、特に地酒には、飲むものにその土地の風土や文化を感じる何かがあるのかもしれません。

また日本酒は、冠婚葬祭すべての場にて供されています。
祭礼では、神に捧げる酒。お目出度い場では、喜びを分かち合う酒。悲しい場では、お浄めの酒。と、私たちの生活、特別な喜怒哀楽の場には欠かせない存在でした。このような風習は、日本独特だそうです。

日本酒を飲むとき、人は季節や風土を感じる酒器を選んだり、喜怒哀楽その感情に合った酒器を選びます。
例えば… 夏には涼しげな切子の酒器。冬にはぽってりと厚みのある陶器。お祝いでは赤い漆の盃。葬儀では真っ白な猪口。といった具合です。

こうして日本の文化の中で様々な酒器が生まれてきたのでしょう。そして、色彩や柄、素材、(陶器の)産地など、酒器のディテールにこだわることで、情景を彷彿とさせるような食の場を作り上げているのかもしれません。
それは酒器の位置づけが、無形文化遺産となった ”和食文化” に含まれていることを意味しているのではないでしょうか。

八限目の最後に…

今では頻繁に使われる ”蛇の目の利き猪口” は、意外と歴史が浅く数十年前につくられたそうです。日本酒にも、他の要因を取り除いて同じ酒器で酒質を利くという行為が必要だと考えられてのことなのでしょうね。

近年、各地の地酒が日本のどこにいても飲める時代になりました。また、その酒質自体も格段に向上しています。それに呼応するかのように、日本酒を飲む酒器のバリエーションも、どんどん広がりつつあるようです。

講座の最後に木村氏は、
「日本文化を伝える道具として日本酒を使う。日本文化を理解していないと、日本酒の良さは伝わらないのではないか。」
ということを仰られていました。

自分でお酒を飲むときでも、酒質を活かす、季節を表す、気分に合わせる etc. などを考えて、酒器を選ぶのはとても楽しい事です。さらに、日本文化を伝えるつもりで酒器を選ぶというのは、とても面白そうです。
日本酒の深遠なる世界を、ここでもまた垣間見たような気がした講座でした。


※ 注 ※
この記事は筆者が受講して、特に印象深かった点を中心に記述しています。実際の講座では、本記事にない色々なお話がなされています。また、ところどころ感想もまじえておりますので、ご了承ください。