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日本酒と料理との相性を楽しむ基本~日本酒伝道師(R)養成講座17

日本酒と料理との相性を楽しむ基本~日本酒伝道師(R)養成講座17

今夜の話は、日本酒と料理の相性について。
この回で、日本酒伝道師養成講座の基本講座は最終回になります。

講師はおなじみ、日本酒伝道師養成講座・塾長 杉原英二 先生。
杉原先生は、和食のユネスコ無形文化遺産登録をきっかけに、日本酒も和食の一つという視点から、「和食、日本人の伝統的な食文化」を支援する目的で、2012年「日本酒文化を楽しむ会」を設立されました。以後、毎月ひとつ日本酒の酒蔵をピックアップし、その酒を楽しみ、日本文化に親しむイベントを開催されています。また、早稲田・慶応出身蔵元の日本酒による「美酒早慶戦」も企画・開催されており、これらのイベントを通して日本酒ファンを広げる活動をされています。

杉原先生ご自身は、もちろん大のお酒好き。食文化としての日本酒をご自身でもしっかり味合われています。そんな先生から、今夜は日本酒と料理の相性についてのお話しを伺いましょう。
 

日本酒と料理との相性を楽しむ基本

日本酒には様々な香・味のものがあります。また、その飲み方、飲むときの条件によっても味わいが変わってきます。例えば…

  • 常温で/冷たくして/温めてと、温度による違い
  • 新酒/秋あがり/熟成 と、季節・熟成による違い
  • 開栓直後と、開栓日数経過後の違い
  • 酒器の形状や、材質による違い

など、同じお酒であっても楽しみ方は色々。日本酒は型にはめないで様々なチャレンジで、味わいたいお酒だといえます。

そして、日本酒は料理との相性によって楽しめます。
米と水からできている日本酒は、食中酒としても合わせやすいお酒です。もう一歩踏み込んで、料理との相性についてこだわってみると、色々な楽しみ方で変化することがわかります。例えば…

  • お酒が料理をひきたてたり、反対に料理でお酒の味が引き出されたり
  • 料理の素材・味付けのバリエーションで、お酒の味わいが変わったり
  • 食べてから飲む/飲んでから食べる、その順序によってさえも感じ方が違ったり

と、実に多様な変化を魅せてくれるのが、日本酒の楽しいところです。

料理と日本酒の相性にこだわり始めると気付くのは、お酒の特徴により相性がことなること。甘口に感じる吟醸酒、酸の高い純米酒、芳醇な古酒 etc. と、お酒の持つ個性で、料理と合せた印象が大きく変わります。近頃では、この料理にはどんなお酒がオススメか、食の専門誌などでも特集が組まれる程、奥深い世界となっているのです。
 

日本酒の味の分類

お酒と料理との合わせ方を掘り下げる前に、お酒の特徴をみるポイントを確認しましょう。

日本酒の味わい方のチェックポイントとしては、味・香り、それに加えて 見た目 も有ります。

専門家のチェックは、お酒を注ぐところから始まります。
酒器に入れたお酒の見た目は、表面の感じがクリーミーか、さらさらか。その色合いは、濾過して透明色か、無濾過で色みをおびているか、それはどんな色か。さらに、飲む前の上立ち香は、華やかか、落ち着いているか、どんな香りか… と、これらの印象から、お酒の味わいを想像します。

いよいよ次に、お酒をじっくりと味わいます。
まず香り。口に入れてすぐの含み香、そして飲み込んだ後の残り香はどうか。香りのタイプだけでなく、香の余韻もしっかり感じましょう。
そして味わい。甘い/辛いだけでなく濃醇か、端麗か。お酒に含まれる酸は、強く感じるか、弱く感じるか。その酸のタイプは、リンゴ酸・クエン酸などのフレッシュなものか、重みのあるコハク酸、乳酸なのか。
さらに、舌で味わった感触。なめらかか、尖った印象か。喉越しのすべりはよいか。最後に飲んだ後にキレは、スパッと切れるか、ゆっくりフェードアウトするのか、長く切れずに残るのか。

なんとたくさんのチェックポイントでしょう。
このように多角的にチェックし、印象に残ったポイントを、テイスティングメモとして記録に残す方もいます。

前述のように、言葉によるお酒の表現もありますが、もう少しお酒の特徴を表す軸をしぼって、定量的もしくは定性的にお酒を分類する方法もあります。代表的な二つの分類チャートを紹介しましょう。

● 日本酒度と酸度の関係(左グラフ *1)

最も知られている日本酒の定量的な指標です。
日本酒度 : 水を基準とした清酒の比重指数で、糖分が少ないと +値に振れ辛口 といわれます。
酸度 : 酸性を示す指数ですが、特定の酸の濃度について示すものではありません。平均的な清酒の酸度は 1.0~2.0 程度で、酸が強いと辛口 に感じます。
この二つの指数により、お酒の味を甘辛/濃淡で分類したものがこのチャートです。

● 香と味わいによるタイプ分け (右グラフ *2)

味の濃淡 × 香りの強弱 の二軸で表します。
辛口か甘口、淡麗か濃醇だけの表現では日本酒の味わいが伝えきれない、消費者にとって分かりやすい香味の分類が必要として、考え出されたのがこのチャートです。
相対的な味の濃淡と、香りの強さの感じにより、熟酒/醇酒/薫酒/爽酒 の四象限にお酒を分類します。

これらは、あくまでも一つの目安です。
このような分類に当てはめなくとも、料理との相性を考える時には、自分なりにお酒の印象を記憶し、料理と合わせたとき感じたことを記録していくのもよいでしょう。

*1 日本酒度と酸度による分析
論文 : 清酒の味覚に関する研究 国税庁醸造試験所 佐藤 信 他
(掲載誌 1974年 日本醸造協会雑誌)
*2 香と味わいによるタイプ分け
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)により考案された、日本酒の分類方法。
参考 : 「日本酒のタイプ分類」 酒仙人 日本酒・焼酎ポータルサイトより

 

お酒と料理の相性の基本

お酒と料理の相性を考える前に…
そもそも「相性が良い」とはどういうことをいうのでしょう?ざっくりいうと、こういったことではないでしょうか。

  • 相性が良いとは?
    お酒と料理、お互いの持ち味が引き立って、うま味・甘味が増加し、人が心地よく感じる
  • 相性が悪いとは?
    お酒と料理、お互いの持ち味を消して、不快な苦味や渋味が出てしまう

つまり、お酒と料理の相性の良し悪しは、それを食べた人が心地よく感じるかどうかということ。

味の分類には、甘味・塩味・酸味・苦味・旨味の基本五味があります。この他に、辛味や渋味も味を構成する要素ではありますが、基本五味には含まれません。 
これらの味が口中で混ざることによって互いに影響し合い、人はその味を感じます。異なる味覚が合わさることで、それらの味が高まったり、ある味が抑制される効果が生まれます。科学的には複数の味要素が合わさり、バランスのとれた構成になることで、それを心地よく感じて「美味しい」と思うのです(*3)。

日本酒は、基本五味のうち塩味以外の要素を含んでいます。
そこで、酒の肴の定番・塩辛やスルメイカなど塩気の強いものを一緒に食べると、日本酒の持つ甘味と肴の塩味が相乗効果を生み、お酒の味が引き立ち「美味しい」と感じるわけです。このような状態を、最近では「マリアージュ」という言い方でよくあらわされますね。

*3 味に関する参考サイト
 AISSY 株式会社 ホームページより
 ・ 味覚とおいしさについて
 ・ 味博士の研究所 味覚の知識 「味覚を意識すれば、科学的においしい料理が作れる!?」 他

そんな基本五味をおさえたうえで、日本酒と料理のマリアージュについて考えてみましょう。

お酒と料理を合せたときのマリアージュには、次のようなタイプがあります。

  • 相乗効果(同調・調和)
    濃い味のモノには濃醇なお酒、淡白な料理には軽快なお酒と、バランスをとって双方の良いところを引き出します。例えば、関東風のおでんに旨味のしっかりした燗酒や、白身の刺身に淡麗辛口の吟醸酒などがこの例になります。
     
  • 口中調理
    お酒と料理が口の中で合わさったとき、それぞれの良いところが調和して、新しい風味を生み出します。たとえば、少し苦味のあるお酒と生臭みある魚料理を合せる。すると、苦味のマスキング効果で、臭みが抑えられ旨味が増強して感じられるなどがあります。
     
  • ウオッシュリセット
    お酒により、口の中の辛さやくどさを洗い流す効果です。脂っこい料理を食べた後、酸の高い辛口のお酒で口中をサッパリさせる、辛いモノを食べた後に甘口の酒で和らげるなどの例があります。

これらのマリアージュタイプを踏まえて、熟酒/醇酒/薫酒/爽酒 それぞれのお酒のタイプと相性の良い料理の例を紹介しているのを時々見かけます。例えば…

  • 香が華やかな薫酒には、香りで味が引き立つ料理を
    ~カルパッチョなど柑橘類を添える料理 など~
     
  • 爽やかでバランスの良い爽酒は、料理を引き立たせる
    ~淡い味付けの豆腐料理、軽快な旨味の鮎の塩焼き など~
     
  • フルボディの膨らみのある醇酒は、料理に旨味を足す
    ~しっかり煮込んだおでん、濃味タレの焼き鳥 など~

といった具合です。

ただし… このようなマッチングは、あくまでも参考に。
「美味しい」と思う味覚は、人によって異なります。
まずは、自分のお気に入りのお酒に、これは!! というような相性の料理を探してみましょう。そんな「ペアリング」のストックを蓄積すれば、日本酒ライフがより愉しくなるのは間違いなしです。さらに、嗜好の似た仲間と情報共有することで、料理とお酒を楽しむ幅が広がっていくことでしょう。
 

日本酒の幅広い楽しみ方を伝えていきましょう

「日本酒と料理との相性」についての講座はここまで。

伝道師が伝えていく使命の一つは、『日本酒の美味しさと楽しみ方を伝える』ことがあります。美味しい日本酒と料理の楽しみ方を知ることは、その意味でもとても重要です。

お酒と料理を楽しませてくれる、一流のサービスマンであれば、その方は日本酒初心者か、食の好みは、好きな日本酒タイプは、その時の体調は… などなど、先ず相手のことを知ろうとするでしょう。その上で、お酒と料理のチョイス、順番、コスト、そして相手とのコミュニケーションに配慮した「おもてなし」を行うのです。

これは大変だ!
今まで勉強した知識を総動員しても、満足してもらえる「おもてなし」ができるだろうか??

少なくとも、伝道師養成講座を終えてた私たちは、

  • 日本酒の造りを勉強して、その味わいの由来を知りました
  • 日本酒を提供する際、酒器選び、温度帯、料理との相性で味わいが変わることを学びました
  • また、日本酒の歴史を学び、話題の引き出しも増えました
  • 何より、日本酒の美味しさ・楽しみ方は身を以て体験しています

プロ中のプロのような完璧なおもてなしは、まだ難しいかもしれません。しかし、10か月間の講座を通して日本酒愛が深まり、日本酒の素晴らしさを伝えていく準備はできました。

これからは日本酒伝道師として、得た知識をベースに、テイスティング、料理とのマッチングなどの経験を蓄えつつ、皆さんへ更なる情報発信を続けていきます。
 


※ 注 ※
この記事は筆者が受講して、特に印象深かった点を中心に記述しています。実際の講座では、本記事にない色々なお話がなされています。また、ところどころ感想もまじえておりますので、ご了承ください。